Counterscrapsを公開したのは2000年3月3日です。文字や数字ではなく、絵のグリフだけで作ったディンバットフォントでした。発想は、1990年代後半のグレースケールPDAの一つ、Palm Pilot 1000で試していたことから生まれました。通勤中、小さなLCD画面にスタイラスで、台所をテーマにしたクリップアートを描いていました。端末の描画アプリは極めて限られていましたが、その制約の中で作業しました。リノリウム版画をまねたスタイルにするため、太い黒の四角いペン先で粗い形を描き、それから細い白のペン先で削るようにして、輪郭をもう少し整えました。
端末をコンピューターと同期したときに、その絵を自動トレースし、フォントとして公開しました。アウトラインの大半は自動トレースしたまま残し、整理は最小限にとどめました。粗い仕上がりでしたが、目指していた美意識には合っていました。
Counterscrapsは当初、商用利用も無料のデスクトップライセンスで公開しました。2020年8月にはパブリックドメインにしました。ライセンスの変更以外は一度も更新していません。本格的なタイポグラフィの仕事というより実験として作ったものですが、ときどき使われているのを見かけ、1ドルショップの商品にまで登場したことがあります。