Clipwaveを公開したのは2011年11月3日です。その頃、何か月も繰り返しの多い企業向けの仕事を続けた後で、書体デザインに向ける気力がかなり失われていました。受注仕事で作ってきた、洗練されて抑制の利いたフォントとは大きく違うものを作りたかったのです。その結果がClipwaveでした。予測できなさを積極的に取り込んだ幾何学的な実験で、落ち着かず、苛立っているようですらある質感を生みました。
文字は大文字だけで描き、レーザーの軌跡のような見た目にしました。内部には、ロボット掃除機が床に残す移動の跡を思わせる模様を加えました。同じ形の繰り返しを避けるため、バリエーションを自動的に切り替えるOpenTypeの代替字形の仕組みを作り、単語や語句の中に疑似ランダムな効果を生みました。これによってClipwaveには、当時ほかに手がけていたものとは異なる、神経質に震えるような、技術的な感じが出ました。
Clipwaveはほとんど売れませんでしたが、商売への期待より、個人的な気持ちの解放を求めて取り組んだプロジェクトでした。2021年6月18日には更新し、ドット付きLやブレーヴェ付きEなどの廃れた文字を削除し、長い分子や分母に対応するようOpenTypeの分数機能を拡張し、余分だったfiとflの合字を取り除きました。また、一部のアウトラインも整えました。曲線の誤りが特定のアプリケーションで描画の問題を起こしていた可能性があったためです。
目立ったプロジェクトでClipwaveを見たことはありませんが、私にとっては、日々の決まった仕事から意図的に離れ、不安や落ち着かなさを文字の形に捉えようとする試みでした。